丹有法律事務所では、今年から「家庭の法と裁判」(日本加除出版株式会社)という雑誌を購読しています。この雑誌には離婚や相続、少年事件といった家庭にかかわる判例や最新動向の解説が掲載されているのです。

「家庭の法と裁判」の2015年10月号に婚姻費用の分担額についての判例(大阪高等裁判所平成26年8月27日決定)が掲載されていました。

夫婦は別居したとしても、配偶者と子どもの生活費を負担しなければなりません。負担すべき生活費のことを婚姻費用といいます。婚姻費用の具体的な分担額について争いになるケースが少なくありません。

実務上、婚姻費用の分担額は裁判所が公表している標準的算定方式によって決めるのが通常です。夫婦双方の収入と子どもの数から自動的に婚姻費用の分担額が決まるのです。

ただ、標準的算定方式は子どもが公立高校に通っていることが前提になっています。そのため、子どもが(公立ではなく、授業料等の高い)私立の学校に通っている場合には標準的算定方式では生活費が不足することになります。

それでは、不足する生活費の額はどのように分担すべきなのでしょうか。大阪高等裁判所は次のように判断しました。

「標準的算定方式による婚姻費用分担額が支払われる場合には双方が生活費の原資となし得る金額が同額になることに照らして、上記超過額(私立学校の費用)を抗告人(妻)と相手方(別居した夫)が2分の1ずつ負担するのが相当である。」

つまり、不足する生活費(私立学校の費用)は夫婦で折半すべきという判断です。

ただし、この判断基準がすべての事案について適用されるかはわかりません。収入が低額であるなどの事情がある場合には、収入の額に応じた比率で分担額が決まることもありえます(「家庭の法と裁判」の解説)。

(馬場民生)