先週末、私は大分県由布市で開催された雇用関係の研究会に参加しました

「旅を満喫してやろう!」と考えた私は、神戸発のフェリーさんふらわあに乗船し大分へ向かったのです。

研究会では長澤運輸事件(控訴中)とハマキュウレックス事件という最新の裁判例を素材にして意見を交換しました(ニュージーランドにおける女性の地位についての報告もありました)。両判決では労働契約法20条違反の有無が争点になっています。

労働契約法20条
「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」

要するに、期間の定めがあるからといって、待遇面で正社員と不合理な差をつけてはいけないと労働契約法20条には書かれているのです。両判決では嘱託社員(定年後再雇用)と契約社員について正社員との待遇面の差が「不合理」といえるかが問題となり、いずれも「問題あり」との判断が出ています。

研究会では、定年後再雇用の嘱託社員の問題について多様な意見が出ました(長澤運輸事件)。とりわけ、実務家(社会保険労務士)が「私が知る限りでは、最近の人手不足の影響により、定年前と同条件で再雇用するケースが大半だと思います。」と話されていたのが私には印象に残りました。地方では若者の減少と相まって、人手不足が深刻です。ですので、定年後も働き続けて欲しいと多くの会社経営者は考えているというのです。

これが事実なのであれば、政府が唱えだした「同一労働同一賃金」の実現は、(少なくとも地方では)現実の方が先行しているのかもしれません。

帰りのフェリーは、台風の影響で甲板に出ることができませんでした。しかし、研究会の充実した意見交換についてじっくりと振り返る時間を持つことができました。

行きのフェリーでは甲板から海上を眺めることができました。甲板のベンチに座り空を見上げると天の川の星々が目に入ってきました。思いがけない光景に私は息をのみ、そして、感激しました。

心から旅を満喫できたことに感謝です。

(丹波市 弁護士 馬場民生)