「弁護士の成年後見人は身上監護をする必要ないですよね。」

私は複数の弁護士からこのように聞かれたことがあります。私は講演の度に「成年後見人の役割としては、財産管理事務と身上監護事務がありまして、、、」と話していました。ですので、想像もしていなかった質問に驚いてしまい成年後見制度の解説本を読み返してしまいました。

もちろん、弁護士だからといって身上監護事務を免除されるわけがありません。民法858条に「成年後見人は、成年被後見人の生活、療養監護」に関する事務を行うと書いてあります。社会福祉士等との複数後見の場合に「分掌」と呼ばれる審判がなされた場合を除き、弁護士であろうがなかろうが成年被後見人の身の回りの世話をしなければなりません。

もっとも、身の回りの世話といっても、成年後見人自らがおむつ交換を行うわけではありません。成年後見人は事実行為ではなく、契約等の法律行為を通じて身上監護に努めるのです。成年後見人が成年被後見人を訪問して状況を確認するのも、身上監護事務の一環と考えられています。

それにしても、どうすれば冒頭のような考え方ができるのでしょうか。弁護士の仕事はお金に関する仕事という意識があるのかもしれません。どのような仕事観を持つかは個人の自由ですが、お金に関する仕事だけをしたいのであれば成年後見人に就任するのは止めるべきです。「成年後見人になれば、通帳を保管しているだけで顧問料をもらえる。」と言っていた弁護士もいました。成年後見人の仕事はそんなに甘くありません。

(丹波市 弁護士 馬場民生)