「聞くは一時の恥 聞かぬは一生の恥」

今日の朝、祖母から事あるごとに言われていた言葉を思い出しました。どうしてこんな言葉を思い出したのかは自分でもよくわかりません。

大人になった今、この言葉を思い出すと、「そもそも何を聞けばいいのかがわからない。」ことが多いと気付きます。人に「聞く」という行為は、興味関心だけではなく、対象となる物事についての知識や経験がなければできないのです。

このことは弁護士になって法律相談を経験するとよくわかります。相談に来られた方に「他に何か質問がありますか。」と尋ねると、「弁護士さんに相談するなんてはじめての経験だから何を聞けば良いのかわかりません。」と話されるのです。そのように話されるのはもっともなので、「後から聞きたいことが出てきたら、電話でもメールでもいいので連絡くださいね。」と私は話すようにしています。

晩年の祖母の家には近所の友人が頻繁に訪れてきて、祖母と楽しそうに話していました。友人が食べ物をもってきてくれたので、晩年の祖母は自分で料理をする必要がほとんどなかったようです。大学生だった私が祖母の家に寄ると、「〇〇さんにはいつもお世話になっているのだから、民生(私のこと)からもお礼状を出しなさい。」と言われ少し戸惑ったものです。孫の私ではなく、子どもの父がすべきことのような気がしますが、私は祖母の友人と面識があったのでこのようなことを言われたのかもしれません。

祖母のように親しい友人に囲まれ、気になることがあれば人に「聞く」という姿勢があれば悪い人に騙されてお金を失うような目には遭いにくいのでしょう。事実、祖母が詐欺師に騙されたという話はついぞ聞くことはありませんでした。

(丹波市 弁護士 馬場民生)