民事、家事を問わず調停制度の利用者からは、(相談者からみて)「相手方の味方ばかりする。」との不満が出ます。利用者の言い分をよく聞いてくれないというわけです。もっとも、調停員が味方しているように見える相手方も、同じ不満を持っていることが少なくありません。
調停員は相手方の言い分を伝え、折り合える点を見つけ出すことが仕事です。相手方の言い分を伝えるので、利用者から見ると(相手方の言い分ばかり伝える調停員が)相手方の味方ばかりしているように見えるのも、調停制度の仕組み上やむを得ない面があります。

問題は、調停員が間違った法律上の見解を堂々と述べる場合です。裁判官の意見として述べることさえあります。しかも、人生への影響が大きい離婚調停において見られることが問題を深刻にしています。

例えば、成人年齢の引き下げにともなって、注目を集めた養育費の支払終期です。原則は20歳までですが、これには例外があります。実務上多いのは、4年制大学への進学が決まっており、両親とも進学を認めている場合です。4年制大学を卒業するためには、20歳を過ぎても養育費が必要です。ですので、20歳を過ぎても養育費の支払いが続くことがあるのです。
これは定着した実務です。ところが、ある調停員は弁護士の私に対して、
「養育費は20歳までですね。」
「裁判官もそう言っていましたわ。」
と言い放ったのです。私が反論すると「それは婚姻費用の場合でしょ。」との珍説まで調停員が披露する始末でした。裁判官はあくまでも原則論を話しただけなのでしょう。裁判官は調停員から事案の詳細を説明されていないのです。大学卒業まで養育費を支払うべき事情を説明した書面は提出していました。しかし、残念ながら忙しい裁判官はすべての書面に目を通す時間がありません。その結果、調停員の間違った発言につながったわけです。
(成人年齢の引き下げと養育費の支払終期についてはこのブログもご参照ください。ここでも調停員のトンデモ発言が出ています。)

ほかにも、住宅ローンを相手方が支払っているから、賃料を払ってもらっているのと同じなのでローン負担額を婚姻費用から引かないといけない、と言った調停員もいました。調停員の説明は間違っています。確かに婚姻費用の算定にあたって、住宅ローンの負担を考慮する事案もあります。しかし、調停員が考えるような単純な話ではありません(弁護士でも理解が不十分な方がおられます)。

弁護士が目の前にいても、これだけ問題のある調停員の発言が繰り返されるのです。弁護士をつけずに調停をされている方は、何を言われているのでしょうか。とても心配になります。
調停員の言うことが納得できないときは、弁護士に相談して欲しい。調停員も無責任なことを言うべきでない。簡易裁判所の民事調停では特に問題を感じません。ところが、家庭裁判所の家事調停(離婚等)になると調停員の問題発言が頻発するのです。
「調停員の言葉を鵜呑みにするな!」
と私は言いたい。
(丹波市 弁護士 馬場民生)