高齢者と障害者について虐待防止法が整備されました。地域の市町村は虐待のおそれがある場合の通報先とされただけではなく、高齢者・障害者の保護のために権限を行使することを法的に義務付けられました。法的義務を説明するのは容易ですが、紛争性の高い虐待案件について市町村職員が権限を行使することは大変な心理的負担を伴います。紛争を仕事とする弁護士でさえ虐待対応は簡単ではありません。市町村職員にとって心理的負担が大きいことは十分に理解できます。

虐待対応における心理的負担を軽減するために、なにを心掛ければよいのか。私は次の5つが基本だと考えています。

1 権限と義務を正しく理解する
2 事実確認を重視
3 無理はしない
4 警察の援助を要請
5 外部の専門家の助言

詳細を説明するとブログではとても書き切れません。詳細は私の話をお聞きする機会があるときに譲ります。

次に、裁判例からわかる虐待対応の際の注意点を次のとおりまとめておきます。

1 虐待が予見できるのであれば防止すべき義務がある
2 通帳の記載やけがの現認、医師の意見等があれば客観的な事実確認としては十分
3 暴力等の態様は具体的に聴取する必要
4 やむ措置等の違法性は合理的な裁量の範囲内か否か
5 養護者への事前説明や意向確認は必ずしも必要ない
6 居所等を養護者に回答する義務はない。保護したか否か自体も回答する義務はない。
7 後見申立自体が違法となることは考えにくい。ただし、類型には注意

裁判例等を踏まえた上で、最後に虐待対応のポイントをまとめると次のようになります。

1 虐待対応は心理的な負担が大きい
2 正確な法律知識が負担を軽減してくれる
3 独りよがりな判断とならないためにも、チームで動く
4 事実認定は正確、客観的、具体的に
5 職員のみでは負担が重いので外部の専門家、警察を利用。不必要なことを考えない(家族の思い、逮捕の恐れ)
6 事実確認後はできる限り速やかに動く
7 以上を尽くせば裁判になっても怖くない
8 無法者に対しては毅然とした対応をする(刑事、民事)
9 後見制度は必要があれば躊躇なく活用する
(丹波市 弁護士 馬場民生)