日本で最後の切腹刑は明治3年9月に執行されました。場所は徳島市の蓮花寺。徳島藩から独立しようとした淡路の家臣が切腹刑に処せられたのです。「自由と正義」7月号(日本弁護士連合会の機関誌)の連載「司法の源流を訪ねて」に紹介されていました。

切腹という極めて非人道的な刑が、明治時代に入ってからも行われていたという事実には考えさせられます。長い人類の歴史に位置づければ、明治時代の出来事はさほど古い話ではありません。私達と変わらない人間が、切腹という刑を行っていたのです。

歴史上の出来事と考えるとあまり実感が湧きません。しかし、歴史とは現在と過去との対話です(E・H・カー)。

日本の憲法は「残虐な刑罰」(第36条)を禁じています。切腹が残虐な刑罰に当たるのは間違いありません。人々が過去の残虐な歴史を忘れ、日本国憲法の規定に意義を見いださなくなったとき、社会で何が起きるかと考えると私は恐ろしくなります。

徳島市の蓮花寺、訪れたい場所がまた1つ増えました。

(丹波市 弁護士 馬場民生)