成年後見人に選任されると銀行等の金融機関に出向きます。本人名義の口座について成年後見人選任の手続をする必要があるのです。選任して間もない時期ですので、法務局への登記が終わっていません。そこで、裁判所の発行する審判書と確定証明書を金融機関に提示して、成年後見人への選任を証することになります。

ところが、確定証明書が発行されない場合があります。1人の成年後見人が選任され審判が確定した後に、別の成年後見人を新たに選任する場合です。なぜなら、追加で選任される場合には不服申立の手続がないからです。成年後見人の選任手続において不服申立できるのは、後見開始の審判に対してのみであって、どの成年後見人が選任されるかについての不服申立はできません。「後見制度の利用に不満はないが、選ばれた後見人は気に入らないので別の人にして欲しい。」との申立は制度上認められていないのです。

ところが、金融機関は後見制度の仕組みを正確に理解していません。金融機関の顧問弁護士も後見制度には疎いことが少なくありません。そのため、「今回は確定証明書が発行されないのです。」と繰り返し説明をしても、金融機関の窓口では理解してもらえないことがあります。結局、登記事項証明書を取得できるまで手続が進みません。速やかに後見業務を開始できないストレスは非常に大きいものがあります。

実は未成年後見人でも確定証明書は発行されません。なぜなら、未成年後見人の場合、後見開始の審判に対する不服申立の手続が存在しないからです。ここでも金融機関の理解を得るのは容易ではありません。成年後見制度と同様に考えてしまうため、確定証明書の提出を執拗に求められることがあります。

金融機関の皆様には後見制度の仕組みを正確に理解して欲しいと切に願っています。

(丹波市 弁護士 馬場民生)