「日本の母子家庭の就労率は8割を超えており、これは国際的にもトップレベルである。」

家庭の法と裁判2018年12月号に東北大学の下夷美幸教授が「子どもの貧困と日本の養育費政策」という論文を寄稿されています。母子家庭の貧困について非常に説得力のある議論をされています。

日本の母子家庭の就労率は世界トップレベルです。それなら、母子家庭と貧困は無関係なのか。

下夷教授は次のように指摘します。
(OECD諸国のなかで)「日本だけは「就労している」ひとり親世帯のほうが、「就労していない」ひとり親世帯よりも貧困率が高くなっている。」

つまり、母子家庭の母親が頑張って働いたとしても、その結果が伴わないのです。しかも、このような母子家庭の状況は先進国の中では日本だけのようです。

下夷教授の議論からは、DV対策等の項目にあがっている就労支援の効果は限定的だとわかります。「働けど働けどなお我が暮らし楽にならざり」が日本の母子家庭を取り巻く現実なのです。

離婚成立後の母子家庭を取り巻く厳しい現実を前に、離婚をためらっている女性は少なくないはずです。ひどい暴力にさらされてもこれに耐え続ける女性がいなくならない背景には、このような貧困問題があることに、私達はもっと目を向けるべきです。

(丹波市 弁護士 馬場民生)