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離婚が子どもに与える影響への関心が高まっています。「家庭の法と裁判」の最新号(2016年5月号)でも「離婚紛争における合意形成支援の現状と課題」と題する特集が組まれており、子どもの利益や支援の取り組みなどが紹介されていました。

私も離婚の際には子どもの利益に最大限の配慮をすべきと考えます。ただ、なにが子どもの利益なのか、どの機関あるいはどの組織がどのような役割を果たすべきなのかを具体的に考えると一筋縄ではいかない現実があります。

とりわけ一方当事者(父か母)から委任を受ける弁護士は、子どもの利益を実現しずらい立場にあります。弁護士が専門家としての知見を示して再考を促すことはありえます。しかしながら、最終的には依頼者(父か母)の意向に従わざるを得ません。その意向が子どもの利益に反するものであったとしても、弁護士は抵抗できません。

子どもを巡って対立のある事件は、当事者(父母)の相手方に対する敵対感情が苛烈です。特に面会交流が争点となる事件では、相手方に子を会わせまいとする親(多くは母親)が敵対感情をむき出しにして相手方を批判することが稀ではありません。弁護士としては裁判所の調整能力に期待したいところですが、残念ながら両当事者の間に入る調停員の質は現実には追いついていないと言わざるを得ません(もちろん例外はあります)。

今後の方向性としては、家庭裁判所の機能と離婚後の支援体制の強化が欠かせないと私は考えています。家庭裁判所の調停員の質を向上させると同時に、両親への教育や子ども代理人による意思確認の積極的実施、離婚する際に裁判所を積極的に利用する仕組みの構築が必要です。また、面会交流の支援組織を気軽に利用できる社会づくりを推進すべきです。養育費の未払いに対しては厳しい対応をしなければなりません。特に、養育費を回収する前提として、義務者(養育費を支払うべき人)の勤務先や銀行口座の所在を容易に探索できる制度が必要です。

(丹波市 弁護士 馬場民生)